庭にちょっと頼りない感じの柿の木があります。昨年は実が青いままで落ちてしまいましたが、今年はこれだけ実がなっています。もうすぐ食べられそうです。
「今年は柿が豊作で里の秋が美しい」という書き出しで始まる短編小説があったように思います。たしか川端康成の「掌の小説」の中の一編でした。
母親が娘を売りに町までバスで連れて行く(!)んですけれども、娘はそのバスの運転手さんのことが好きなんですね。で、母親がその運転手さんに「どうせ明日から知らない男の慰みものになるんだから抱いてやってくれ」と頼みます。まあ多分そのようにことが運びますが、翌日、母親は娘に泣かれたり運転手さんに説得されたりしたあげく「今回はやめるけど春になったら必ず売りに出すからね」とぷんぷんしながら娘を連れてまたバスに乗って家に帰る、というあらすじだったと思います。
中学生の時に読んだ記憶がありますが、長く印象に残りました。柿が豊作で里の秋が美しいというフレーズが作品の最初と最後に書かれており、山里に柿がたくさん実っている風景が鮮やかに脳裏に焼きついたものと思われます。
和田町にもぼちぼち柿の木が見受けられます。海辺の町の柿の木も秋の空に映える実を実らせてきれいです。
(記:2015年10月5日)