南房総(房総半島南部)を舞台にした小説、エッセイ、紀行文などを紹介していきたいと思います。

また舞台が南房総でなくとも、作者が南房総出身者の作品もぜひご紹介したいと思います。

 

第一回 トワイライト・シャッフル 乙川優三郎 著 新潮社

 

この本がきっかけで、新コーナーを作ろうと思い立ちました。

「房総本」一発目です。

この作品は房総半島南部の海辺を舞台とした十三本の短編から編まれています。

各短編の間の登場人物たちに何かつながりがあるわけではなく、それぞれ独立した物語になっており、滋味あふれる読み応えがありました。

十三篇の主人公たちは、いわゆる「いけいけどんどんどん」ではない状況で生きています。若さや健康、愛する者の喪失、不安や自分の現状についての割り切れなさ、不満、そういった中で揺らぐ心が描かれ、どの人物にもとても共感できます。

それぞれの主人公はある者は気づき、ある者はささやかな転機を得て「自分はどのように生きていくのか」という問いに答えを見つけます。どの物語も劇的な事件がおこるわけではありませんが、日々の生活こそがドラマに他ならないわけですね。

 

どの物語も好きですがベストスリーは

「イン・ザ・ムーンライト」

「ビア・ジン・コーク」

「私のために生まれた街」

です。

 

作家の三浦しをんさんの書評が、ブック・アサヒ・コムで読めます。

トワイライト・シャッフル [著]乙川優三郎[評者]三浦しをん(作家)

プロの作家の書評はやっぱりすばらしいですね・・・

それでも三浦さんの挙げたベストスリーのうち2つが共通していたのでなんとなく得意な気分です。

 

著者乙川さんのインタビューも新潮社のWebで読めます。

 

[乙川優三郎『トワイライト・シャッフル』刊行記念特集インタビュー]挑戦、習作、現代、房総――

おすすめ度 ☆☆☆☆☆

房総に行きたくなる度 ☆☆☆